久しぶりに思い切り日本語を話せる環境がこんなに嬉しいものだったとは!
私は普段あまりおしゃべりでない。
でもこの時おふたりは相当迷惑したかもしれないくらいひとりではしゃぎ、
ベラベラ話しつづけてしまっていた。
そして話しながらついに思い出した!
「あの、私、日本であなたにお会いしたことがあります。」
妹さんはまったく記憶がないという。
それはそうだろう。
もう何年も前の話だし、(私は大学生だったかもしれない)
あるセミナー・・・で、数時間同じ空間にいただけ。
その時出席していた他の人なんて私自身まったく思いだせないのだもの。
でもただひとり、私の記憶に残った人がいた。
それがその妹さんだった。
何十人かいた中で彼女は「バリバリのキャリアウーマン」って
感じで、本当に(当時も)かっこ良かった。
すごく大人の女性っていう感じで、質問もてきぱきして目立っていた。
でもそれだけなら私もすっかり忘れてしまっていただろう。
セミナーの帰り道、たまたま帰りの方向が同じだった私は
その年上の女性としばらく一緒に帰る恩恵にあずかった。
大抵そういう時はその場だけの当り障りのない話で別れるだろうが、
何故か、その女性は「生まれる瞬間の記憶」の話をしてくれた。
ある時ふっと自分がこの世に生まれるときのことを
鮮明に思い出したのだと言う。
しかもそれは父と母を自分で選んで。
そのとき、いろいろあったことをすべて許すことができ、
ただ感謝の気持ちで溢れたのだ、という。
私にはそういう経験がまったくないので、彼女の体験が本当かどうか、
幻覚なのか夢なのか、今でもわからない。
でも、たった数十分一緒にいただけとは言え、
すごく理性的なキャリアウーマン風の彼女の外見と
その話のギャップがすごく印象的だった。
しかも彼女はある女優さんに似ていたので私の中では
強い印象となって残ったのだと思う。
私のことをまったく思い出せない彼女は、
「どこかで会ったことがある」という私の訴えを
“ナンパ師のお約束”のように、笑って聞き流していた。
でも記憶にあった話を打ち明けると、彼女の顔色が変わった。
「本当にびっくりしたわ!あなた、あの時の、、、
だってね、私、後にも先にも
あの話は一度っきりしか人に話したことがないのよ。」
この旅ではじめて自分から声をかけた日本人。
しかも恐ろしく広大な国の小さな田舎街で。
その人は不思議な出会いを過去にしていた人だった。
小さな偶然が重なって、何かが動いている。


